【第204回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第204回】柚月裕子『誓いの証言』
大橋は、原じいが亡くなった経緯を佐方に伝えた。
「原じいは酒に酔っていたうえに、大雨で足元が滑りやすくなっていた。足を滑らせて、岩のうえから落ちてしまったんです。警察もそう発表しました。晶が養女にもらわれていったのは、そのあとです」
佐方は、少し考えるような間のあと、晶の保護者について訊いてきた。
「晶さんに、親御さんはいなかったんですか?」
大橋は頷いた。
「アキちゃんの両親は、彼女が二歳のときに交通事故で他界しました。父親の圭一は私の同級生でした」
「原さんが、晶さんのただひとりの保護者だったんですね」
確認する佐方に、大橋は晶を引き取った文子について説明した。
「アキちゃんを引き取った安藤文子は、アキちゃんの父親――圭一のお姉さんです」
文子は高松市内の高校を出たあと、広島の薬科大に進み、結婚して香川に戻ってきた。香川と高知の県境にある、蓮倉市で暮らしている。そう大橋が言うと、小坂が勢いよく佐方に顔を向けた。
「そこです。戸籍にあった安藤晶さんの本籍地も蓮倉市でした」
大橋は小坂に訊ねた。
「今回のことで、文ちゃんに会いに行ったんですか?」
小坂は困ったような顔をして、首を左右に振った。
「晶さんが養女だったと知った三日前に、文子さんの自宅の電話番号に連絡したんですけれど、誰も出なかったんです。留守番電話にうちの事務所の電話番号と、お話ししたいことがあるから連絡をくださいってメッセージを残したんですけれど、いまだに連絡はありません。だから、まず先に晶さんが住んでいた蕃永町を訪ねて、晶さんのことを知っている人に話を聞こうっていうことになったんです」
佐方が小坂から話を引き継ぐ。
「安藤文子さんが、いまどうしているかご存じですか」
(つづく)
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